認知症患者の中には父のように複数の持病などにより、ことなるいくつかの病院へ通院している方もいらっしゃると思います。今回は通院時の経験についてお話します。
- 1 まず家族の持病・通院歴などを知る
- 2. 家族の助け合いが必要
- 3. 注意すべきこと
- 4. セカンドオピニオンも検討する
1 まず家族の持病・通院歴などを知る
父が糖尿病を患っていたことは把握していたものの、認知症を発症するまで、かかりつけ医の医院や処方箋も知りませんでした。
さらに後から、眼科にかかっていることもわかり、処方されている数種類の目薬も認知症の進行した父には自己管理できなくなっていることも把握しました。
家族が本人の状況を把握するには、お薬手帳も有効ですし、処方薬の説明書類なども保管されていればより良いと思います。早めに把握することで本人に代わって薬の管理や必要な検診なども付き添いができ、認知症以外の症状悪化防止につながります。
もし皆さんのご家族がお元気であれば、今のうちにお互いの持病・通院状況を普段から話し合い、理解を深めておくことは大事なことでしょう。
2. 家族の助け合いが必要
複数のことなる病院にかかっている家族が認知症になった場合、とうてい家族一人ですべてをカバーするのは難しいです。
家族構成や同居、別居の場合の物理的な距離、介護する家族の子育て・仕事事情により難しい局面も増えてきます。
私は当時、平日仕事をしていたため、平日の通院は母が付き添い、土曜の午前中に通院が必要な病院は私が付き添いするなど分担していました。
さらに手術や入院時は、仕事は休暇届を出し私が立会いましたが、病院側の都合で退院が早まったり、急に呼び出されることもあり家族間の協力は欠かせませんでした。
しかし、以前テレビのドキュメンタリーで見たご家族は、息子さん一人で寝たきりのご両親2人を自宅介護しており、介護離職と夜中にご両親を交互に介護しており、寝不足のループに陥っていました。このご家族のような例が身近にあることも確かなのです。
認知症介護家族の会で出会ったご家族の中には、新幹線で介護に通っている方もいらっしゃいました。
介護にはいらっしゃればご家族の協力は必要ですし、介護サービスを積極的に活用することが重要になってきます。
3. 注意すべきこと
介護サービスを利用するためには、下記が必要です。
・住んでいる地域の「包括支援センター」へ相談・介護サービス利用の意思を伝える。
・役所の介護認定員に、介護サービスを利用するための介護認定を受ける。
なぜ注意が必要なのか?
要介護度により、介護費用が何割負担になるのかつまり利用料金が変わってくるからです。
ここで重要なのは要介護度はかかりつけ医の診断書もそうですが、「認定員が自宅に訪問して介護対象者となる本人の様子を見に来る」ということです。
認知症の本人は認定員に対して、自分は病気ではないことを証明しようとするのです。実際、普段の父と認定員の前での父は別人のようなふるまいでした。
普段はまともに歩けない父が、認定員の前ではしっかりとした足取りで歩きだしたのです。認定員との質疑応答も普段と違い、まともに答えようとして大変驚いた記憶があります。
他の認知症患者を持つご家族でも同じ経験をされた方がいることを知りました。
そこで私がお勧めしたいのは、認知症の家族の日常行動を簡単なメモでも「必ず記録しておく」ことです。
幸い、私の場合、本来の父の症状・言動・行動などをこまめにメモしておくことで、認定員の方に普段との違いを事細かくお伝えすることができました。
記録していくのは手間かもしれませんが、認定されて実際に介護サービスを利用するにあたっても、介護事業者やケアマネージャーとケアプランを立てたりするにも大切な情報となります。私は日記など続かないタイプでしたが、このときはしっかり記録し、私が仕事で不在中に起きた出来事も母から話を聞いて記録していました。
4. セカンドオピニオンも検討する
父の場合、若いころに白内障の手術をした片目と、反対側の目も白内障が進行しつつあり、眼圧を抑える目薬を2種類、両目に使用するよう処方されていました。
最初に通院していた眼科では、白内障が進行しているため失明しないよう手術が必要と診断を受けましたが、認知症が進行した父は医師の話を理解できず手術を拒否。私が父の認知症のことを伝えても、その医師は「ご本人が同意しない限り手術はできません」と冷たく突き放されるだけでした。
セカンドオピニオンで訪れた別の眼科でも同様の診断でありながら、具体的な話が進まず、サードオピニオンで訪れた眼科でやっと、細かな診察と父の認知症も理解した上で、直近の手術は不要のため少し定期健診で様子を見ましょうと寄り添った診察をしてくださったのです。
しばらくその眼科に定期的に通院し、若い時に白内障手術を受けた片目の人工レンズの位置がずれてきたことが判明した段階で、両目の手術に向けて紹介状を書いていただきました。
目の手術を受けるにあたり懸念していたのは下記についてです。
・通常、目の手術は「部分麻酔」で行うが状況把握ができない父が手術中に暴れる可能性が高く危険。
・1回の手術につき片目ずつでは、通院や入院の負担が大きい。
これらの懸念事項も医師に相談し、「両目の手術を、全身麻酔で1度に行える」医師を紹介してくださったのです。結果、無事に両目の手術を終え退院することができました。
ここに至るまで3年近くかかりましたが、ときにはセカンドオピニオン、サードオピニオンすることも厭わない行動が必要となります。
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