認知症患者には個人差があるが様々な言動がみられます。今回も父の代表的なケースとどのように対応していたかについてお話したいと思います。
1. 物盗られ妄想
2. 攻撃的になる
3. 同じ商品を複数買い続ける
4. デイサービスに持ち込み禁止の貴重品・お金を持ち込む
1. 物盗られ妄想
父の通院に付き添いし、診察終了後に診察料を病院の受付で支払う際に、私自身の財布から立替で支払を済ませても、「息子が自分の財布からお金を盗った。」と受付で他の人がいる前で言われたことがあります。
ただ、認知症になると物を家族に盗られたという言動がみられることを、認知症に関する書籍を読んだときに目にしていたため、話をスルーして冷静に対応することができました。
もし、このような言動がみられる病気であることを知らなければ、本気で父と口論になっていたかもしれません。
2. 攻撃的になる
比較的これも症状として多く見られます。認知症と診断された初期は父をふくめた家族で外食する機会もありましたが、ある日入った外食店舗で隣のテーブルに座ったご家族の中で「しょうがい」をお持ちの方が声を発していました。
認知症になる以前の父であれば、状況を把握して何も言わないのですが、父は敵意をむきだしにして、「しょうがい」をお持ちの方へ「うるさい。静かにできないのか」と声をかけていました。私からそのご家族にお詫びしましたが、以降、家族で外食に出かけることが出来なくなったのです。
デイサービスも父の攻撃的な態度に手を焼き、通所1か月もしないうちに介護施設の方から通所を丁重にお断りされたこともあります。こちらも施設の方にはお詫びと感謝の気持ちをお伝えしたこともありました。
時には、包丁を探すことがあり、事故があってからでは遅いため、東急ハンズで包丁を収納するケースを購入。2か所のボタンをスライドさせないと包丁が取り出せない仕組みのため仮に包丁の場所が父にわかったとしても、収納ケースからは取り出せないように安全対策をしていました。
根本的に攻撃的にさせないためにも、下記も意識はしましたが、実践するのはかなり難儀しました。
- 否定的な言い方をしない
- 行動を制限しすぎない
特に行動制限について、散歩に出かけようとする本人を危ないからと行動制限するとかえって反発します。散歩をさせないのではなく、一緒に行く(私の父の場合はそれも拒みました)付き添えなければ、後から本人に気づかれないように付いて行き、後方から見守ったり、GPSを忍ばせておき、スマホで父の現在位置を把握しておくことなども行っていました。
3. 同じ商品を複数買い続ける
父が認知症と確信したのは、まさにこの行動でした。毎月2種類の雑誌を書店で定期購入していた父が、ある日、A誌8月号を1冊購入して帰宅。ものの数分もしないうちに再度外出。
再度帰宅した父が購入したのは同じA誌8月号でした。私が父からレシートを受け取り購入した書店へ返品・返金の相談に行き、事情を説明。返品後に自宅へ戻ると、すでに父が再度外出し、その後、3度目の帰宅。その手には再度、A誌8月号がありました... かなりショックを受けたことを覚えています。
少なくとも、父が認知症と診断されて2-3か月近くは2種類の定期購読誌の発売されると同じ購入行動が繰り返され、ひどいときは同じ号の雑誌を5-6冊購入したこともありました。
本人は購入したことを覚えていません。購入済みの雑誌を一旦家のどこかに置いてしまえば、どこに置いていたかも覚えていないのです。そして雑誌を購入しなければと思い立ち何度も買いに出かけるというループ行動になります。
1冊700円ほどの雑誌でしたが、重複して買い続ければ出費はかなりかさんできます。
そこで、私は父の顔写真付きの書店への依頼文を作成 (A4サイズ:1枚)しました。
父が認知症で重複した雑誌を購入し続けること、差し支えなければ父が書店へ来店時に「その雑誌は先ほどお求めになりましたよ」と軽く声掛けをお願いできませんかという内容です。
父の行きつけの書店が2店舗ありましたので、私は2店舗にお願い文を持参、書店員に口頭でもお願いをしました。書店員さんは快諾してくださいました。今でも感謝しています。
その後、書店の場所を忘れ始めた父は雑誌を購入するのに、自宅に近いスーパーへ足を運び父の求める雑誌は扱っていないことを知ると、レジ打ちの店員に自分の定期購読の雑誌がないかと頻繫に尋ねに行くようになりました。
スーパーの方も取り寄せすれば購入できますと案内したようでした。
そこで、私は書店と同様に父の症状について書いた書面と口頭で、スーパーの売り場責任者の方にお会いしました。父が取り寄せを依頼した場合、取り寄せしますと返答だけしていただき、実際にはお取り寄せしないようお願いしました。
さらに、近隣の店舗や住民とのトラブル防止のため自宅近くの交番にも出向き、お巡りさんにも同じ書面を渡してこれまでの経緯などを説明しました。
こうしておけば、万一のときでも周囲の方が状況を把握していることにより、お互いに安心できると考えたからです。
認知症は見た目だけではわかりません。また、認知症による言動がどのようなものかは認知症患者をみている家族や医療関係者でなければ理解していないのは、ある意味当然と言えるでしょう。
だからこそ、周囲に隠すのではなくオープンにすることで周囲の理解が得られ認知症患者と家族、近隣の方々が安心して過ごせることにつながるのではないでしょうか。
4. デイサービスに持ち込み禁止の貴重品・お金を持ち込む
デイサービスは利用料が口座引き落としのため、他の通所者や介護施設とのトラブル防止のために不必要な金銭、貴重品の持ち込みは禁止されています。
ただ、父は外出時、愛用のウエストバッグは必ず持参する習慣でした。
中には通帳、健康保険証、現金が入っていました。
認知症とは言え、全てをいきなり忘れるわけではありません。習慣は忘れにくいのです。
金銭・貴重品の持参は盗難防止の面でも禁止と説明をしましたが、理解できないばかりか激高してウエストバッグを振り回したり、マンションの4階から道路に投げ捨てそうになり、職員さんや家族が慌てて止めることもありました。
どう対応したのかと言いますと、下記の方法をとりました。
- 通帳は繰越後で現在使用していない通帳だけをバッグへ入れておく
- 健康保険証はカラーコピーをバッグへ入れておく
- 現金は最低限の2-3千円のみバッグへ入れておく
上記により、大事な通帳と保険証は自宅で管理することができました。
現金は最低限にすることで万一盗難にあっても大きな問題には発展しません。これらのことをデイサービスの職員へお話して、ウエストバッグと2-3千円の現金のみ持ち込みを了承してもらいました。
この方法により、父が所持品で怒ってあばれることも無くなり、職員も家族も安心できる状況をつくることができました。
まとめ
今回の内容もほんの一例です。大切なことは「周囲の協力を得る」「患者本人、家族、周囲の人が安心するために何がベストか?」を考えることです。
そのためにも、認知症について理解を深めることが何より重要なのです。
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