TVドラマ「俺の家の話」

  • 本ドラマの概要
  • テーマに感じるところ
  • まとめ

本ドラマの概要

「池袋ウエストゲートパーク」や「あまちゃん」で有名なクドカンこと、宮藤官九郎さんが脚本を手掛けた2021年の新しいテレビドラマである。

名優:西田敏行さん演じる伝統芸能「能」の人間国宝である父が認知症になったことをきっかけとして、長瀬智也さん演じる息子を中心に家族の介護へのかかわりを、クドカン流のホームコメディに仕上げている。

テーマに感じるところ

これまで認知症を取り扱った映画やドラマはあったものの、テーマが重くシリアスになりがちになることが多くみられた。ただ過去に落語を取り扱ったドラマ「タイガー&ドラゴン」において宮藤官九郎、西田敏行、長瀬智也の共同作業により、放送当時、若い世代の落語人気のきっかけを作ったところもあり、今回も伝統芸能の「能」のみにとどまらず、「認知症」を扱っていることに多いに興味を持ったのである。

父と息子の関係性や、家族が介護にあたるときの行動だけでなく、各人物の戸惑いや感情まで非常にリアルに描かれていると思う。本来それのみであれば暗くなりがちだが、ドラマも話が進むにつれて恋愛や芸能(歌、プロレスなど)の面でも脇の役者たちのキャラクターが立っており、笑える場面も非常に多い。クドカンの作品にはおなじみの阿部サダヲさんなどゲストとして出演しているのも作品のカンフル剤となっている。

宮藤官九郎さんは、作品の中で現実に向き合いつつも笑いのエッセンスを加えられる稀有な作家だと個人的に思っている。コロナ渦の今、ドラマの登場人物たちも場面によりマスクを着けているし、過去には「あまちゃん」で東日本大震災もドラマ内で取り扱っている。視聴者としてそれらの作品を見ていると現実離れし過ぎず、笑えるのにふざけすぎてもいないバランス感覚が絶妙なのである。

40代から50代は親も後期高齢者となり、否が応にも介護が身近なこととなる。親孝行と思ってしたことに対しての、父のけして本意ではないが否定的な一言から親子喧嘩をしてしまうシーン、認知症の進行に対する動揺、自宅介護から介護施設へ移る際の長瀬さん演じる息子の切ない心情は、自分の父との認知症介護とも重なるところがあり、涙なしにはいられない。

まとめ

当時の自分の経験に照らし合わせながらも、ドラマを楽しみにして見られるのは長瀬さん演じる主人公が家族への愛情が深く、純粋で且つ迷いながらも行動する前向きな姿勢に希望を感じるからだ。

自然災害、感染症、テロなど世界的に重たく深刻な状況が続いても、結局そこをふまえて今日を明日を生きていくためには人それぞれ表現の違いはあっても「とにかくなんとかしたい」と願う良心と行動なのだ。

まだ見ていない人には是非細かいことは考えずに見てほしいオススメのドラマである。

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